このたび、京都市獣医師会の会長を拝命いたしました村田裕史でございます。
歴史と伝統ある本会の運営に携わる機会をいただき責任の重さとともに、その使命の大きさを改めて実感しております。
京都は千年以上にわたり四季のうつろいとともに、人と動物が共に生きる文化を育んできたまちです。
その背景には「動物も人と同じようにかけがえのない命を持つ存在である」とする価値観が深く根付いています。京都市が掲げる『京都動物愛護憲章』には、その精神が端的に表されており、私たち獣医師にとっても重要な指針となっています。
憲章に示されている「動物を思いやる」「動物のことを学ぶ」「動物との正しい関わりを考える」「動物との絆を最後まで大切にする」「人にも動物にも心地よいまちをつくる」といった行動理念は、私たちの活動の根幹と重なります。
京都市獣医師会では「いのちをみつめる」「いのちを育む」という理念のもと、狂犬病予防注射の実施、人獣共通感染症対策、動物愛護の普及啓発、学校飼育動物への支援、学術活動の振興などさまざまな公益事業を展開しています。
また、本会は夜間の急病に対応する「京都夜間動物救急センター」を自ら運営し、地域の救急獣医療体制を支えています。京都動物愛護センターに収容された動物たちへの診療支援や健康管理にも積極的に協力し、命の尊さに寄り添った活動を続けています。
「動物とともに暮らす豊かで潤いのある生活」の実現に向けては、**四国地域の野犬の子犬の殺処分を減らし、京都市内の飼育希望者とつなぐ「Kyoto 犬ちゃん Foster Bridge」**の取り組みを展開しており、地域を越えた命のリレーを支えています。
さらに近年では、動物愛護法の改正により、ブリーダーの飼育頭数や繁殖回数に制限が設けられたことで、繁殖を終えた「リタイア犬・猫」たちの行き場の問題が新たな課題として浮かび上がっています。
京都市獣医師会では、これらの命に光を当て、未来の家族との出会いを支援するべく「わんにゃん Happy Match」プロジェクトを立ち上げました。この取り組みは、リタイア犬・猫と新しい家族とのマッチングを行うもので、すでに多くの成果をあげ、人と動物がともに生きる喜びを広げています。
私たちはこれからも、すべての命が尊重される社会の実現に向けて、多様な分野の会員とともに、地域に根ざした獣医療を提供してまいります。そして、市民の皆さまに信頼され、期待される獣医師会であり続けるよう誠実に歩みを進めてまいります。
今後とも、京都市獣医師会へのご理解とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
![]() |
公益社団法人京都市獣医師会 |